股関節の痛み|歩くと痛い・立ち上がりが痛い
股関節(足の付け根)の痛みを整理し、受診の目安を案内。
こんにちは。整形外科医として、日々皆さんの「歩く喜び」を支えるお手伝いをしています。
「椅子から立ち上がる時に股関節がズキッとする」「最近、靴下を履くのが少し大変になってきたかも……」そんなふとした瞬間の違和感、我慢していませんか?股関節は、私たちの体重を支え、歩く・走るといった動作を支える「土台」となる非常に大切な関節です。
特に女性は骨盤の形やホルモンバランスの影響で、股関節に悩みを抱える方が少なくありません。今日は、股関節の不調とどう向き合い、いつ受診すべきかについて、医師の視点からお話しします。
1. 「歩き始め」や「立ち上がり」の違和感に気づいていますか?(症状の出方)
股関節のトラブルは、多くの場合、急に激痛が走るよりも「なんとなくの違和感」から始まります。
- 始動時痛(しどうじつう):朝起きて歩き出す時や、椅子から立ち上がる瞬間の鈍い痛み。これが初期のサインであることが多いです。
- 痛みの場所:足の付け根(鼠径部)だけでなく、お尻の横や太ももの前側に痛みを感じることもあります。
- 進行すると:最初は動いた時だけだった痛みが、長く歩いた後も続くようになり、やがては「何もしなくても痛い(安静時痛)」や「夜眠れないほどの痛み」に変わってしまうことがあります。
2. 「まだ大丈夫」を「今、相談しよう」に変える。受診の目安
股関節は一度軟骨がすり減ってしまうと、自然に元通りに再生することはありません。そのため、早めに現状を知ることが大切です。
以下のようなサインがあれば、迷わず受診を考えてくださいね。
- 1〜2週間、付け根の痛みが続いている
- 階段の上り下りや、車への乗り降りが辛くなってきた
- 歩く時に体が左右に揺れるようになった(跛行:はこう)
- 足の爪切りや靴下を履く動作がしにくい
「年齢のせいだから」と諦める前に、まずは今の関節の状態を正しく把握しましょう。
3. 診察室で教えてほしい、あなたの「痛みのヒント」(受診時に伝えるポイント)
診察の際、以下のことをメモしてきていただけると、診断の大きな助かりになります。
- 痛む場所はどこですか?(足の付け根を Cの字で掴むように痛みますか?それともお尻ですか?)
- どんな時に痛みますか?(歩き始め、階段、あぐらをかいた時など)
- 痛み始めたのはいつからですか?
- 子供の頃、股関節の健診で指摘を受けたことはありますか?(発育性股関節形成不全などの既往は重要なヒントになります)
4. 納得して治療に進むための、検査と診断の流れ
「整形外科ではどんな検査をするの?」と不安に思われる方も多いですが、基本的にはお体に負担の少ない方法から進めていきます。
- 身体診察:ベッドに横になっていただき、医師が足を優しく動かしながら、可動域や痛みが出る角度を確認します。
- レントゲン検査:骨の形や、関節の隙間(軟骨の厚み)を確認します。ほとんどの診断はこのレントゲンで可能です。
- MRI検査(必要に応じて):レントゲンでは分からない、軟骨のごく初期の変化や「股関節唇(こかんせつしん)」というクッションの損傷が疑われる場合に検討します。
5. 靴下、階段、お掃除……日常で「困った」を感じる場面(生活で困る動作)
股関節が固くなってくると、日常生活の何気ない動作に制限が出てきます。
- 和式トイレや低い椅子からの立ち上がりが辛い
- 自転車に乗る時に足を上げるのが大変
- 家事の最中、床にあるものを拾うのが億劫になる
これらの動作が制限されると、外出する機会が減り、足腰の筋力がさらに落ちてしまうという悪循環を招きかねません。治療の目的は、単に痛みを抑えることではなく、あなたが「行きたい場所へ自由に行ける」状態を守ることです。
FAQ:よくある質問
Q:股関節痛は整形外科でよいですか? A:はい、整形外科が専門です。股関節の痛みには、軟骨の問題(変形性股関節症)だけでなく、筋肉や神経が関わっている場合もあります。まずは「運動器」の専門医である私たちにご相談ください。
Q:片側だけ痛い場合は? A:股関節の疾患は片側から始まることが非常に多いです。痛みをかばって歩くことで、反対側の股関節や腰、膝まで痛めてしまうこともあるため、片側だけでも早めの対応をおすすめします。
Q:歩き始めだけ痛いのは? A:それは「始動時痛」と言って、初期の股関節疾患によく見られる特徴的な症状です。放っておくと持続的な痛みに変わる可能性があるため、この段階で受診していただくのが理想的です。
Q:当日受診できますか? A:はい、可能です。ご来院ください。
Q:検査の案内はありますか? A:はい。問診のあと、必要に応じてレントゲン撮影などのご案内をいたします。検査結果はその日のうちに画像をご覧いただきながら詳しく説明いたします。
Q:費用の目安は? A:3割負担の方で、初診料とレントゲン検査を含めて3,000円〜5,000円程度(お薬代別)が目安となります。
参考文献
- 公益社団法人 日本整形外科学会:変形性股関節症
- 日本股関節学会:股関節症診療ガイドライン2020
- 厚生労働省:e-ヘルスネット(変形性関節症)
